不必要な問い合わせ対応という超巨大心労を減らすために個人開発者ができること

本当に残念だ。
私も、作っているのはゲームではないけど、個人開発者だから、似たような経験をした覚えはある。具体的には、doで配布しているテンプレートやプログラムについて、不必要な問い合わせを大量に受け取っていた時期がある。
この「文字化化」の開発者さんと同じで、問い合わせをしなくても解決できるように、Q&Aやマニュアルを用意しているのに、それを読まずに問い合わせしてくる人もたくさんいた。だからこの件を知って本当に悲しく思った。
Q&Aやマニュアルを用意しても、それを読まないで直接開発者・製作者に突撃してくる人は、残念だけどびっくりするほどたくさんいる。
毎日大量の質問を受け取っていた当時の私は、この開発者さんと同じで、ものすごく疲れていたし、イライラもしていた。do関連のあらゆる通知に怯えていた。どうにかして状況を変えたいと思っていたけど、誰に相談すればいいかもわからなくて、途方に暮れていた。
でもそんなんじゃ運営を継続できないと思って、いろいろ対策をして現在に至る。今となっては、答えられない質問が私のところに直接来るようなことはほとんどない。ほぼストレスフリーだ。いいことだ。
日々大量の(しかも不要な)問い合わせに対応するのは、想像以上に心労が大きいことである。個人の開発者がそういった心労を避けるためにできることを、この記事で考えてみたい。
この記事が、日々大量の不要な問い合わせに悩まされている開発者に、ひとりにでも届けばいいなと思って、私がやったことを書き残しておく。
個人開発者といっても、いろんなケースがある。使っているプラットフォームや、開発物のターゲット層が違えば、適切な対策は異なってくるだろう。もしかしたらここに書いてある対策がまるで役に立たない場合もあるかもしれない。しかしながら、この記事を何らかのヒントにしていただければ幸いだと思い、ここに書き残しておく。
問い合わせを送るハードルを上げる
まずできることのひとつが、問い合わせを送るハードルを上げてしまうことだ。不必要な問い合わせは、開発者に気軽にメッセージを送れるプラットフォームがあるから来てしまう。ならば、メッセージを気軽に送れなくしてしまえばいい。
なくてもいい問い合わせフォームは閉じる
必要な問い合わせと、不必要な問い合わせとの数を比べたとき、不必要な問い合わせの方が圧倒的に多く届く窓口は一旦閉じてしまうのが良いだろう。
私の場合はマシュマロがこれにあたった。もちろん好意的なメッセージが寄せられることはあった。このプログラムがとても便利です、使っています、ありがとうございます……というもの。しかし、それを圧倒的に上回る不必要な問い合わせの数に疲弊しきってしまったのだ。
マシュマロを閉じた代わりにOFUSEを開設した。こちらは投げ銭とともにメッセージを送ることができるサービスだ。今のところ、数ヶ月に一度くらいの頻度で、ちらほらとファンレターが送られてくるだけの窓口になっているが、それで構わない。投げ銭をしてまでメッセージを送ろうとしてくれる人の存在自体がありがたいし、たいていとても丁寧にありがとうの気持ちを伝えてくれる。
OFUSEとは別に、doのサイト内では各ページの最下部に、メッセージ送信機能つきのいいねボタン(いわゆるWeb拍手)があって、クリックするといいねが送信されるとともに、メッセージを送ることができる。不思議なことに、マシュマロからは大量の不必要な問い合わせが来たけど、サイト内のいいねボタンからはそういった問い合わせはほとんど来ない。もしかしたら、問い合わせはこちらにお願いしますとフォーラムへのリンクを貼っているからかもしれないが。
とにかく、アクティブにしている問い合わせの窓口の種類を変えるだけで、問い合わせの内容や質がガラリと変わるということはありうる。不必要な問い合わせばかりが来てしまうのは、プラットフォームの問題があるかもしれない。なので、不必要な問い合わせばかりが来てしまうような窓口は、一旦閉じてみるのもアリではないだろうか。
問い合わせフォームへのリンクを目立たないところに移動させる
大手の企業サイトでもよく見る対応である。皆さんも例えば、配信サブスクリプションやネットなんかの解約手続きを、一度ぐらいはしようとしたことがあるんじゃないだろうか? 解約手続きをするページがどこにあるか分からなくて「Dis○ey+ 解約」のようなワードでググった経験があるんじゃないだろうか?
訪問者にあまり来てほしくないページは、目立たないところにリンクを貼る。これが有効な対策になる。
doではかつて、ヘッダーのグローバルナビに問い合わせリンクを設置していのだが、対応できない問い合わせの増加にともない、問い合わせリンクをフッターだけに変更した。こうすると、不必要な問い合わせがぐんと減った。


どうしても私にコンタクトをとる必要がある人は、目立たないところに貼ってあるリンクも見つけ出して連絡をしてくれる。これでいいのだ。
問い合わせに対応する頻度を下げる
次に、問い合わせに対応する頻度を減らす仕組みを作ろう。
ユーザー同士で問題解決できる場(フォーラム)を設ける
私の場合は、個人サイト制作に役立つテンプレート・プログラムの開発配布が活動の趣旨だ。私のところに来る問い合わせは「このテンプレートをカスタマイズしたいけど、やり方がわからない」とか「このプログラムをこういう環境に設置したけど、うまく動かない」とか、そういった内容のものがほとんどだ。
そういったことを開発者に聞くのは、決して間違いじゃない。ただ、doでは配布しているテンプレートもプログラムもほとんどすべてが無料だ。つまり、そういった問い合わせにわざわざ対応しても、私の利益にはならないのだ。しかも、問い合わせのほとんどはHTML/CSSやサーバーに関する初歩的なもので、少し知識をつければ分かるようなことだったりする。なので、こういった問い合わせには原則、本当にプログラムやテンプレートの不備でない場合は対応しないことにしている。
でもそれでは、ユーザー目線ではあまりに冷たく見えるかもしれない。そこで私がとった対策のひとつが、ユーザー同士で問題を解決できるように開かれたフォーラムを設置することだった。
具体的には、WordPressプラグインであるbbPressを導入してdoサイト内に設置した。フォーラムの入り口には一枚ページをかませて、以下のようなことを明記した。
- 開発者も質問の内容を確認するが、全ての質問には回答できないこと
- 忙しい時には確認すらできない場合があること
- 自分にも回答できそうだと思った質問には、積極的にレスしてほしいこと
- 質問を投稿する前に、プログラムの設置マニュアルやQ&Aをよく確認してほしいこと
- 質問を投稿するときに、問題解決のために必要になりそうな情報を記載すること(使用サーバーのスペック、使用プログラムのバージョン、具体的な症状、質問する前に試したこと……)
最初は、まあユーザー同士で解決するといっても実際、投稿された質問に私以外の訪問者が回答してくれるケースはほぼないだろう……と思っていた。しかし、始めてみると、意外とユーザーのレスで問題が解決したケースは多くて、本当に驚いたし、ありがたかった。
フォーラムは今もアクティブに動いており、たまに質問が投下されるし、たまに私以外の誰かがレスをして解決に導いてくれる。スパム攻撃にあったりはするが、IPによる投稿制限を設けてなんとかしている。今のところ、お問い合わせフォームを開けっ放しにしていた頃よりもコストをかけずに、ユーザーの問題解消につなげられていると感じている。
通知を切る
各種通知を切ってしまって、問い合わせの確認頻度を減らすのも、一つの有効な手かもしれない。
私の場合、XのDM通知は完全に切っている。 そもそもXのDMは、フォロー外からは受け付けない設定にして、プロフィール欄に「DMでの問い合わせには対応できません」と書いている。さらに、いいねやリプライも含めて基本的に、フォロー外の人からは通知を受け取らないように設定している。
XのDMは、数ヶ月に一回程度しか見ない。たまに見ると、営業メールの類のダイレクトメッセージが届くことがある程度の静かさだ。まれに確認の必要な問い合わせがXのDMに投げ込まれることもあるが、プロフィールにXのDMを使っていない旨を明記しているので、私の落ち度ではないと割り切っている。
問い合わせに対応する/しないのラインを明確にする
問い合わせに対応する基準と対応しない基準を明確にすることも大切だ。
例えば私の場合は、「個人サイト制作に関する、個別に返答が必要な問い合わせ」には対応しないことにしている。
どんな問い合わせであれば返事をするのかというと、まずは個人サイト制作に関係しないことである。例えば、企業からの問い合わせ。お仕事のお誘いなどを想定している。次に個別の返答が不要なもの。プログラムやテンプレートの不具合報告等だ。
問い合わせに対応する・しないのラインを明確にしたら、そのラインをお問い合わせフォームに添えておくのも重要だ。もしかしたら、ワンチャン返事もらえるかも……と思って、対応ラインを読んだ上で問い合わせを送ってくる人もいるかもしれない。でも、あなたは問い合わせの対応ラインを明確にした以上、そういった問い合わせに返事をする必要はない。
また、問い合わせ対応ラインは状況によって柔軟に変えてもいいだろう。私の場合も、問い合わせの量が増えて来るたびに、ちょっとずつ問い合わせ対応ラインを厳しくして行った。その時々で、自分にできる範囲で対応できるように変更していけば問題ないと思う。
不要な作業はどんどん削るべし!
時間は貴重なリソースだ。また、不要な問い合わせによって積もる心労の重さは計り知れない。そもそも、問い合わせを確認するだけでもめちゃくちゃ疲れる。不要な問い合わせの中に、もしかしたら本当に必要な問い合わせが埋もれているかもしれない。全部無視するわけにはいかない。大変な作業だ。
そんなことで時間を奪われているのではたまったものではない。問い合わせの対応は開発者の本分ではない。本当に必要なことだけに集中して対応できるように環境を整えよう。