創作活動

個人サイトはSNSに疲れ果てた創作者の救世主になりえるか

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n度目のSNS離脱ブームが来た。 2024年10月ごろのことである。

きっかけはX(旧Twitter)の仕様変更らしい。こんな騒動はもう何度目になるかもわからない。今回の騒ぎの発端はブロック機能の仕様変更、そしてXの利用規約に「生成AIの学習にユーザーのポストしたコンテンツを利用する旨が明記された」ことだったようだ。

クリエイターにとって生成AIは脅威である。特に画像生成分野の技術向上はめざましく、アドビなど大手のメーカーも生成AIをアプリに導入しているほどだ。絵心の全くない人でも、いわゆる呪文を入力するだけで、それらしい綺麗な画像が生成できる。ものすごい技術だ。

でもそのものすごい技術は、クリエイターにとっては警戒すべきものである。それもそのはずだ。特にイラスト。イラストレーターが通常、何時間、何十時間もかけて作るような美麗なイラストが、生成AIの手にかかればほんの数分、数秒でできてしまうのだから

商業で活躍していない趣味のクリエイターにとっても、やはり自分の絵柄が模倣されてしまう脅威というのは計り知れない。数々のクリエイターがほかのSNSに、あるいは個人サイトに救いや安寧を求めて移行していった。

こういった脱SNS騒ぎは今回が初めてではない。過去に何度も経験している。あるときはpixiv社役員のセクハラ騒ぎ。あるときはX(旧Twitter)のメディア欄仕様変更。こういった騒ぎのたび、私の運営している個人サイト制作支援メディア「do」のアクセスは爆増する。

個人サイトは爆増しているわけではない

で、実際個人サイトは増えてるんだろうか? あくまで私の肌感覚からの回答になるが、答えは「微増している」である。爆増ではない。

このアクセス解析のグラフほど増えているわけじゃない。多分だが、このアクセス爆増のうちの9割ぐらいは「いややっぱ個人サイト作るのって大変そうだし、もうちょっと様子見するか……」という具合に離脱してしまっているんじゃないだろうか? 実際に統計をとってるわけではないので想像にすぎないが。

実際問題として、サイト制作の技術やツールが発達した今になっても、個人サイト制作というのは手間も時間も、あるいはお金もかかる趣味である
クリエイターはただでさえ創作活動に忙しい。貴重な時間を個人サイト制作に費やせるかどうかは、人によるところが大きい。だからこそ SNSが流行ったのだ。

では、このアクセス爆増期にdoに訪れて「やっぱもうちょっと様子見しよう」と考えた人はどこに行ったのだろうか? 多分、一部は普通にSNSに戻っている。一部はクロスフォリオとかポイピクとか、 SNSにイラストを投稿する際に別のプラットフォームを噛ませる形に落ち着いているだろう。あるいはウォーターマークやサインをイラストに入れることで妥協案としているかもしれない。

慣れというものは恐ろしい。 SNSというお手軽なツールに慣らされてしまうと、時間をかけて、できるかどうかもわからない個人サイトを作ってまで自分の創作物をネット上に残すのも、なんだかばかばかしくなってしまう人も、一定数いるんじゃないだろうか

移行先プラットフォームは本当に安心なのか問題

しかし、Xからほかのプラットフォームに移行したところで、所詮、プラットフォームはプラットフォームでしかない

移行先のサービスだって、突然サービス終了する可能性もないとも言えないし、突然の仕様や規約変更だって充分あり得る。移行先のプラットフォームの運営者が不祥事を起こすことだって、ありえないとはいえない。個人的には、やはりすべてが自分の思いどおりにできて、運営者が自分自身である個人サイトを構えてしまった方が安心だとは思うのだが。

個人サイトに定着した人の満足度は高そう

思うに、個人サイトを作ることは、SNSが嫌になった創作者の全ての人のための解決策ではない。個人サイトをつくるのってなかなか大変だ。でも、個人サイトを作って始めて「やっと自分の居所が得られた」「こっちの方が性に合ってると気づいた」と語ってくれる創作者も、少なくはない。

たまに匿名掲示板なんかで、同人サイトを運営している人の意見を見ることがあるのだが、こういう人は確かにいる。たぶん、私はこういう人たちのために今までdoをやってきたんだと思う。

万人の救世主にはなれないけど。救われる人はものすごく救われる。それが個人サイトなんじゃないだろうか。手を出してみる価値は確実にある。

個人サイトを普及させる大きなハードルはふたつ

SNSに疲れてしまった創作者に「個人サイトを作る」という選択肢を選んでもらうためには、大きくふたつのハードルがある。

参入ハードルが高い

個人サイトは依然として、手を出すハードルは高いのが現状だ。いくら情報やツールやその他様々な便利なものが用意されているといっても。手間のかかる趣味であることには変わりはない。ただでさえ忙しい創作者が。自分の貴重な時間や体力を削ってまで個人サイトに参入するのは、とてもハードルが高いことだろう。

doのSNSの告知ポストを拡散してくれた人のホームを見に行くと「私も個人サイト作りたいな~!でも時間ない!」みたいな感じのことを言っている人もわりと多くて、「作ってないんかい!」とがっかりすることもある。

どれだけ情報を発信したところで……最終的に行動しなければいけないのは創作者本人なので、もどかしいところである

あ~、誰か技術のある有志が配布してくれないかな~。サイト制作の知識のない素人でも簡単に設置できていい感じにミニマルな、創作者向けのCMSとか開発配布してくれないかな~。

情報が行き届いていない

そもそも、情報がまだ必要な人に行き届いていないという問題もある。

情報というのは不思議なもので、ただそこにあるだけでは意味がない。その情報を必要とする人がそこにたどり着けなければ意味をなさない。これは今まで私は散々痛感してきたことのひとつだ。

doにはよくメッセージが届く。「〇〇する方法を知りたいです」「〇〇なツールが欲しいです」……あるいは「doで配布しているこのプログラムにこんな機能をつけてください」とか。
でもそういったお問い合わせの中には「あるよ!もうあるよ、うちのサイトで紹介してるよ!ちゃんと読んで!」と言いたくなるような内容のものもある。情報を必要な人に届けることの難しさを日々痛感している。

それと似た感じで、 SNSを移行するという手段のほかに「個人サイトを作る」という手段があることをそもそも知らない層も一定数いそうだな、と感じている。そもそも「個人サイトを作る」という選択肢が頭にない人は、個人サイトの作り方を調べることができないというジレンマがある。

それ以前に、個人サイトというのがどういうものかを知らない人だっているわけで……。どうやって個人サイトに興味を持ってもらうかが課題だなと感じている。

do運営者にできること

個人サイトは、SNSに疲れてしまった現代の創作者たちにとって、とても良い選択肢の一つであると確信している。そんな選択肢があることすら知らないまま、あるいは、知っているのに試すことができないまま、泥船のように沈んでゆくSNSにしがみついている人がいるのはもったいない。

個人サイト作成応援メディアの大手となった私に出来ることといえば、今後も変わらず愚直に、個人サイトを作りたいと思っている人の助けになるような記事やツールを、工夫しながら提供することだけだろう。

また、それとは別に個人サイトの良さ・楽しさを広げるための活動もして行きたいなと思っている。具体的には、先日pixivFANBOXに投稿したように、Discordでコミュニティを作って、個人サイト好き同士の交流を広げるとか。

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今後も応援していただければ幸いである。

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ガタガタ
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Webエンジニア/ライター
Web制作が大好き。絵を描いたりゲームをするのも大好き。
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