こんにちは!gtgtです。
マルチ・ポテンシャライトという言葉を目にする機会が増えてきました。これはエミリー・ワプニック氏が提唱している概念で、ざっくりいうと「さまざまなことに興味を持ち、多くのことをクリエイティブに探究する人」のことです。
詳しくは、同氏のTEDトークで説明されています。
日本ではホリエモンの『多動力』がベストセラーになりましたが、「マルチポテンシャライト=多動力のある人」と言い換えることもできそうです。
世間には「ひとつのことを極め、一分野でのスペシャリストになる」ことが称賛され、大成するカギだとみなす風潮があります。
一方、さまざまなことに次々飛び込むマルチ・ポテンシャライトたちは、興味を追及する喜びのかたわら、「みんな一つのことを頑張り続けているのに、どうして自分は何もかも長続きしないのだろう」「何か一つのスペシャリストになれない自分は、大成することができないのでは」という悩みを抱きがちです。
あるいは、他の人から「あなたは○○の仕事を続けると思ったのに、どうして全く違う分野に転職するの?」ということを言われることもあります。
私はこのすべてを経験しました。他人から自分の生き方に疑問を投げかけられるのってけっこうキツイです。
しかし、ここで一つ嬉しいニュースです。前述したTEDトークの大ヒットを受け、エミリー・ワプニック氏は『マルチ・ポテンシャライト 好きなことを次々と仕事にして、一生食っていく方法』という書籍を出版しました。
内容はタイトルの通り、マルチ・ポテンシャライトたちが自分の好きなあらゆることを手にして、経済的に自立し生きるための方法を紹介してくれる一冊です。
さっそく読んでみましたが非常に良書でした。抽象的な話はナシで、読者の誰もが人生設計をイメージできるような仕上がりです。
- 「私、マルチ・ポテンシャライトかも」と少しでも思った人
- 好きなことを仕事にできなくてうんざりしている人
- 「一つのことを仕事にする」生き方に疑問を抱いている人
以下、パートごとに要約と感想を書いていきます。
Part1:マルチ・ポテンシャライトとは
Part1では、
- マルチ・ポテンシャライトとは何なのか
- 彼らにどういう能力があり、どういう悩みがあるのか
- さらにどのようにすれば幸せに生きることができるのか
を具体的に見ていきます。
マルチ・ポテンシャライトであることに寄り添い、肯定してくれる
マルチ・ポテンシャライトという概念がまだ浸透していない世の中で、彼らは概して「飽きっぽく、集中できない人」「器用貧乏」のように言われ、肩身の狭い思いをしています。
そんなマルチ・ポテンシャライトたちの孤独感や不安に寄り添いながら、著者は「マルチ・ポテンシャライトであることを受け入れて幸せに生きるため」、彼らの「課題」および「スーパーパワー」として、次のことを挙げています。
- 仕事
- 生産性
- 自尊心
- アイデアを統合できる
- 学習速度が速い
- 適応能力が高い
- 大局的な視点を持っている
- さまざまな分野をつなぐ「通訳」になれる
さらにマルチ・ポテンシャライトのコミュニティを作り出した著者ならではの視点で、彼ら特有の「課題」と「特技」をひとつずつ詳しく解説しています。今まで意識していなかった自分の短所・長所に気付くことができるかもです。
もちろん、課題をクリアするための方法や、特技を生かすための考え方にも、本の後半で具体的に触れられています。
私は特に「長所:学習速度が速い」の理由として書かれていた「マルチ・ポテンシャライトは、初心者であることに慣れている」という一文に驚き、目からうろこだと思いましたた。これはつまり、何かをいちから学ぶことに慣れているので、どのように勉強したらいいかを理解しているということです。
本書はあくまで「自分の特性を活かして生きる」ことに焦点をあてて書かれているので、とにかく肯定的な表現が多く、「そのままのあなたで良い」という論調で話が展開していきます。Part1を読了したころには、自分がマルチ・ポテンシャライトであることに自信と誇りを持つことができるようになるはずです。
さらに本書の特徴として、要所要所に「セルフチェック」が挿み込まれており、自分がどんなタイプのマルチ・ポテンシャライトなのか、自分が本当に好きなものや重視しているものは何か、等について考え直す機会が設けられています。
この本を読むときには、メモ帳とペンをお供にすることをオススメします。
Part2:マルチ・ポテンシャライトの4つの働き方
Part2では、幸せな人生を送っているマルチ・ポテンシャライトたちの働き方が大まかに4つに分類できるとして、それぞれのワークモデルを紹介しています。
4つの……と銘打ってありますが、著者曰く「マルチ・ポテンシャライトのみなさんに、『1つ選んで!』などと大胆な発言をするつもりはない」とのことで、これらのハイブリッドのワークモデルを採用しても問題ないとしています。
幸せな仕事を得るための「いくつもの」道しるべ
- グループハグ・アプローチ:ひとつの多面的な仕事に携わることで、職場で多くの役割を担う
- スラッシュ・アプローチ:パートタイムの仕事を掛け持ちし、その間を日常的に飛び回る
- アインシュタイン・アプローチ:生活を支えるのに十分な収入をフルタイムの仕事で生み出し、ほかの情熱を追及する時間とエネルギーも残す
- フェニックス・アプローチ:ある業界で長期間働いたあと、別の新たな業界でキャリアをスタートさせる
ひとくちにマルチ・ポテンシャライトといっても、彼らがどれだけ多くのことに興味を持つか、多くの興味が同時に複数進行するのか、それとも一つずつ進行するのかは異なります。Part2ではそれぞれのマルチ・ポテンシャライトにとってもっとも適切なワークモデルを、4つの分類について詳しく見ながら模索していきます。
著者のもとに集まったマルチ・ポテンシャライト達の実際のワークモデルも紹介されているので、非常にイメージが湧きやすいです。
ちなみに私は、スラッシュ・アプローチとアインシュタイン・アプローチのハイブリッドの働き方をしてみたいと思いました。つまり「ある程度安定した給料の発生するパートタイムと、夢中になれるが安定収入は約束されないパートタイムとをかけ持つ」スタイルです。
それで満足できるかはやってみなければわかりませんが、もしダメでも他の方法を試せばいいかなと思います。
本書はさまざまなワークモデルを選択肢として提示してくれる上、その複数を選ぶことをも肯定してくれます。そのため、視野が圧倒的に広がるし「欲張っても、なんとかやっていけそうだ」という自信を持たせてくれます。
この章でもセルフチェックをする場面があるので、メモ帳とペンをお忘れなく。自分のアイデアをどんどん紙に書き出して、自分という人間がどういう特性を持っているのか知ることが大切だと、ワプニック氏は主張しています。
Part3:マルチ・ポテンシャライトたちの「課題」
さて、Part1ではマルチ・ポテンシャライトの課題として仕事・生産性・自尊心の4つが挙げられました。Part2で「仕事」という課題をクリアする手立ては見えましたが、最後のPart3では、いよいよ生産性・自尊心の守り方について触れられます。
困難に直面したときに読み返したい
「生産性」は、多くのことに興味を示すマルチ・ポテンシャライトにとっては結構大きな問題なのではないでしょうか。筆者は「世の中には生産性を上げるための知見が溢れているけど、そのほとんどはスペシャリスト向けのものであり、柔軟性を重視するマルチ・ポテンシャライトにとっても良い方法だとはいいがたい」と述べています。
私も完全同意で、やりたいことが多く、とにかく衝動や好奇心の強いマルチ・ポテンシャライトには、型にはまったような方法よりも、オーダーメイド的な対策が必要だと考えます。
この章では、紙とペンがあればできる「やるべきことの優先順位」を明確にするマルチ・ポテンシャライト向けの方法を提示してくれます。
「自尊心」については、マルチ・ポテンシャライトが直面するであろう不安と、それに対する前向きな考え方が列挙されています。例えば、
- 「仕事=あなた」ではないのだから、仕事が変わったことでアイデンティティが台無しになるとは考えなくていい
- 大事なのは、一流になることより、現場で役に立つこと
- 一つのことに集中しないことを批判されたとき、その批判が大事な人からの意見でなければ、流してしまってもよい
当たり前だけどときには忘れてしまいそうな、大切なことがたくさん書かれています。この先の人生で困難に直面したときに読み返すと、良いヒントになるかもしれません。
まとめ
悩める人たちに向けられた、愛ある一冊
本書は全体を通して、読者の気持ちに寄り添うように書かれ、共感しながら読むことができました。著者も自分がスペシャリストになれないことに悩み、傷ついてきたからこそこのような本が生まれたのだろうと感じる、そんな本でした。
また、抽象的な話ばかりではなく、「好きなこと・やりたいことがたくさんあっても、経済的に自立しながら幸せに生きる」ための考え方を具体的に紹介してくれるため、今後のビジョンがとても見えやすく、非常に実用的な内容でした。
「自分はマルチ・ポテンシャライトかも」と感じた人は、ぜひ手に取ってみてください。きっと今後の生き方を変えるためのヒントになるはずです。
そして読んでみて「良いな」と思ったら、この本を長く手元に置いておくことをオススメします。これからの生き方を考えていく上で、何度も読み直す価値がある一冊です。
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