【4巻ネタバレ】『ブルーピリオド』ユカちゃんのアイデンティティ表現が面白い【感想】

漫画


ご注意

この記事は漫画『ブルーピリオド』4巻までのネタバレを含みます。
4巻まで読了した人向けです。
ご注意ください。

こんにちは!ブルーピリオドが面白くて面白くて、5巻の発売を待ちわびるばかりのコミックス派、ガタガタです。

4巻までで、ユカちゃんこと鮎川龍二くんの存在が作品内でかなり異色を放ってきたので、本作における彼のアイデンティティについての表現を考察します。

この記事は『ブルーピリオド』4巻までのネタバレをふんだんに含みますので、未読の方はご注意ください。

ブルーピリオドを読んでない方向けの記事は「 【漫画】『ブルーピリオド』がとにもかくにもアツい【レビュー】」です。よろしくどうぞ!

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ユカちゃんのアイデンティティはどこ?

4巻までを読んだ率直な感想を言うと、「ユカちゃんがどういう人物かつかめない」です。

登場人物が立っていない点を批判をしたいわけではなく、むしろそう印象付けるような作品作りがされているのだと感じました。ユカちゃん自身が「自分がどういう人物か」をつかめていないからこそ、読者にも同じように感じさせるよう演出しているのでしょう。お見事ですね。

彼自身が自分をつかめていないのでは?と思わされる演出はいくつもありましたが、

制服の上下を揃えて着ていない
日本画を選んだ理由が「祖母」
好きな男の子がすぐに換わる
彼の作品が出てこない
自画像が描けない

このあたりが特に気になったので、それぞれ掘り下げてみます。

制服の上下を揃えて着ていない

登場人物紹介でも「女装男子」と紹介され、私服もスカートのユカちゃんですが、制服の上下をセーラー+セーラーで着ている場面が一度もないのが気になりました。

下がスカートのときは必ず上が学ランで、上がセーラーのときは必ず下がパンツになっています。

女になりたいわけでも、男として扱われたいわけでもない、性別に縛られたくないという彼なりの自己表現なのかもしれませんが、逆に足元が固まっていないことの表れともとれるのではないでしょうか。

日本画を選んだ理由が「祖母」
好きな男の子がすぐに換わる(要検証)

佐伯先生や大葉先生が繰り返し生徒に指導していることの中に「自分の好きなものを見つけなさい」というものがあります。

美術とは自己表現です。自分を表現するためには、自分の好きなものを明確にする必要があります。だから先生は繰り返し「好きを見つけろ」と指導するのです。

八虎は自分の好きなものを少しずつ見つけ、「森先輩の描く油画」が好きだから油画科を選びましたが、一方のユカちゃんは「祖母が」好きだから日本画科を選びます。

自分が好きだからではなく、祖母が好きだから選ぶというのは、自己表現たる美術を志す者として、なんとも不安な感じがします。

さらに、2巻ではユカちゃんが失恋する場面がありました。

俺の“好き”だけが 俺を守ってくれるんじゃないのかなあ…!

ユカちゃんは可愛い格好をすることが好きで、恋愛対象も男性です。ただ、彼の価値観が、彼の好きになった人にも受け入れられるとは言い難く、ユカちゃんは自分の「好き」なもののせいで傷ついてしまいます。おそらくですが、こういう経験は彼の人生の中で何度も起き、そのたびに彼は深く傷ついてきたはずです。

しかし、ユカちゃんはその後、すぐに他の男の子にアタックしていることが判明しました。恋愛対象が男性とはいえ、どんな男性でも良いということはないのでは?と思いますが、、ひょっとしたら彼は自分の「好き」に傷つくたびに、少しずつ本当に「好き」なものが分からなくなってしまっているのではないかと考えることもできます。

(要検証)とつけたのは、この時たまたま心から「イイな」と思える男の子にすぐに出会えただけなのかもしれない、という意味合いをこめてです。まあ、真実はユカちゃんのみぞ知る……というか、彼自身も自分の本心が分かっていない可能性も高そうですが。

八虎は1巻で青い絵を描いたときに「好きなものを好きっていうのって怖いんだな」と感じていますが、「好きなものを好きっていうの」を一番怖がっているのは、もしかしたらユカちゃんなのではないでしょうか。

彼の作品が出てこない

八虎とは予備校のクラスが違うこともありますが、作中ではユカちゃんの作品が全く出てきません(デッサンすら……)。一番最初に美術の授業で描いた絵が張り出されたとき、八虎の作品の隣に「鮎川」と札のついた、椿のような花の絵がチラ見えした程度です。

美術漫画である『ブルーピリオド』において「登場人物の描いた絵が出てくる」ということは、サッカー漫画における「サッカー選手がサッカーしている」、バトル漫画における「戦士が戦闘している」に相当する出来事です。

それなのにユカちゃんだけ彼の作品が出てこないというのは、とても異質です。1巻の最初から登場しているユカちゃんが、どんな絵を描いてどんなふうに「美術」というフィールドで戦うのかが、4巻までで全く不明なのです。おそらく作者である山口つばさ先生の意図があるのでしょう。これではユカちゃんがどんな人物なのか、読者がつかめないのも無理はないです。

自画像が描けない

極めつけです。4巻の1次試験で、「自分自身をどう解釈しているかが問われる」自画像を、一筆も描くことなく席を立ってしまったこの行動こそが、彼のアイデンティティがゆらいでいることの表れだといえます。

ハッキリとした性格ながら、自分の「好き」や自分自身を好きになった人や家族から否定され、傷つき続けてきたユカちゃんのことを見ていると、この棄権シーンは本当に悲しいものでした。

5巻では彼はどうなってしまうのか、楽しみなような怖いようなで、本当に目が離せません。

まとめ:ライバル格かと思っていたが……

八虎より主人公では?

ユカちゃんは初登場時、主人公・八虎と仲の悪い美術部員として紹介されたので、読者のほとんどが「なるほど、この子がライバルになるのね」と感じたのではないかと思います。

けど、意外なことにも八虎が最もライバル視することになるのは世田介くんで、ユカちゃんはどちらかというと「協力しあう仲間」とか、ともすれば八虎よりも激しい逆境に晒されていて「もう一人の主人公」の意味合いが強い立ち位置になってきました。

彼にもなんとか望むものを掴んでほしいと願わずにはいられませんが、受験は一次で棄権してしまいましたので、、手汗を描きながら5巻を待つしかコミックス派のファンには残されていません。

マンガ情報サイト「アル」によると、ブルーピリオドの第5巻発売は2019年8月末になる予想です。夏を待て!